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help リーダーに追加 RSS 【UNHCR】映画/『約束の旅路』ブログ募金キャンペーン【国連難民高等弁務官】

<<   作成日時 : 2007/04/17 03:15   >>

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『約束の旅路』ブログ募金キャンペーン

 本作の背景となった「モーセ作戦」。一応お断りしておくと、その一大脱出作戦はあくまで物語の発端、背景であって、本作はそれ自体を描いた作品ではない。よって「特攻サンダーボルト作戦」のようなアクションを期待するとえらいことになります。念のため。

 では一体どういう話なのか。
 ストーリーの詳細は他に譲るとして、基本的に本作は、一人の人間が様々な困難を乗り越えて成長する姿を描いた、普遍的な「自分探し」の物語であるといえる。確かに飢餓のエチオピアからスーダンの難民キャンプを経て、生き延びるために出自を偽って、近代的なイスラエルへと「帰還」した主人公の半生は、我々日本人の想像を絶するものがある。それでも主人公が悩み傷つきながら、自らのアイデンティティを模索する姿に、心ある若者であればきっと共感できるに違いない。
 もっとも世界の概ねの地域では、青年期のアイデンティティ形成に人種や宗教が絡まざるを得ないというのが実情であって、この点は我が国の方が特殊なのかもしれない。

 本作では、物語の背景として人種、宗教、政治、歴史、紛争などなど、実に様々な要因が複雑に絡み合ったイスラエルの社会情勢が描かれている。そして国の緊迫した状況を体現しているのが、主人公の養父であろう。
 養父は自らを「宗教左派」と名乗り、家族揃って反戦デモに参加したりする。その一方で、医者になるべく留学することを希望する主人公に対しては、「徴兵について国を守るのは男の義務だ」と怒りを爆発させ、またカナダにでも移住しようと言う妻に対しては、「ここが我々の祖国だ」とにべもない。
 左派を自認しつつも、愛国心に燃える彼の姿は、イスラエルの意外な一面を垣間見させてくれる。
 その養父とは反対に、母親たちの主人公に対する眼差しは実に優しく、慈愛に満ちている。
母親たちというのは、実母、難民キャンプで出会った偽りの母、イスラエルでの養母、そして主人公の妻の四人のことである。
 主人公はイスラエルで、エチオピアと変わらない月を見上げ、母親に語りかける。
 実母は、主人公を難民キャンプからイスラエルへと送り出し、医者になりたいという彼を、今度は養母がパリへと送り出す。
 「ユダヤ人−Wikipedia」によると、ユダヤ人の定義とは「母親が「ユダヤ人」か、ユダヤ教に改宗した人」とある。
 パレスチナの過酷な自然と、それ以上に厳しい歴史的状況の中で発展したユダヤ教の二面性が、主人公の両親によって端的に表現されているのであろう。その厳しさと優しさの両方が、人間が生きていくうえで必要不可欠なものなのだ。
 とは言え、作中では明らかに母親たちの存在感の方に光が当たっている。これが監督の趣味なのか、ユダヤ教本来の姿なのか、どうもよくわからない。恐らくその両方なのであろう。いずれにしても、史実を取り入れながら、細部まで綿密に構成された脚本は、見事としか言いようがない。養母役のヤエル・アベカシスさんもイイです。
 普段のニュース映像では、なかなかお目にかかれない、過酷でありながら、どちらかと言えば西欧諸国並みに自由で豊かなイスラエルの姿に、驚きと同時に親近感も抱いた。もちろん苦難の末にやっと築いた祖国で、さらに人種差別が存在するという矛盾には、首を傾げるのだが。
 我々とは異なり、またどこか似ている主人公の人生と、我が国とは近くて遠いイスラエルとの距離を、本作を観て改めて考えると、何だかとても不思議な気分になる。難民、宗教、人種、人間のアイデンティティそして人生と、単純な善悪やら正義だけでは割り切れない現実を、本作は静かに我々の前に提示してくれる。



 イスラエル政府とモサドは、この「モーセ作戦」後の91年に「ソロモン作戦」を決行している。実は手元に、その「ソロモン作戦」の裏側を描いたノンフィクション、アシェル・ナイム作、鈴木元子訳「エチオピアのユダヤ人」があるのだが未読である。劇中では「モーセ作戦」でエチオピアから「帰還」したファラシャが、社会的に様々な困難に直面する姿が描かれているわけであるが、そのような状況下でも、懲りずに作戦を実行するイスラエル政府とモサドはさすがと言うべきだろうか。

 ちなみに主人公の青年期以降を演じた二人の俳優も、実際に「ソロモン作戦」によって、イスラエルに帰還したファラシャである。

岩波ホール

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