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実はミュシャにそれほど詳しいわけでもないのだが、何故か気になって仕方がなかったので、暇に飽かせて観に行ってきた。都立美術館での展覧会はとっくの昔に終了してしまったが、せっかくなので記事を書くことにする。 会場はもの凄い混雑。さすがにお客さんの9割は女性であった。でも実はアートに興味のないオタク男が、不意にミュシャの名前を口にしたりするからあなどれない。まあ確かにわかる気はする。ファンタジックで非現実的なセクシャリティが彼らの趣味にマッチするのであろう。しかし男のお客さんも至って普通の人々でそれらしき人々は皆無であった。 「四季」「花」「宝石」などの連作、サラ・ベルナールの舞台宣伝用ポスター、油彩画、デッサン、本の装丁、ビスケットの箱などなど、その活動は実に多彩で売れっ子だったことがよくわかる。 連作群にみられる、作品に込められたストーリーの秀逸なアイディアの数々には舌を巻く。背景の丸いモチーフは何だか曼荼羅を彷彿させると思ったのだが、仏教思想に影響されたという説は解説にはみられない。これは天使の輪ですね。「月と星」シリーズは下絵であるが、今回の一番のお気に入りである。 サラ・ベルナールのポスターは高さ2メートル。男役のベルナールの凛々しさにはメロメロである。冷静に考えると彼の作品はどれも、女性的を通り越して倒錯趣味的でないこともない。もちろんそこが魅力なのだが。ポスターの間では何故か、同じく世紀末耽美派の旗手ビアズレーを思い出していた。 ミュシャ様式ともいわれるその独自のスタイルを確立するまでには、恐らく血のにじむような努力があったに違いない。夢見るような女性たちのポーズと表情、画面いっぱいに散りばめられた花々にみられる繊細で微妙な表現を可能にしたのは、地道な訓練によって培われた高度なテクニックである。鉛筆での下絵を見ると、その点がとてもよく実感できる。 そしてこの繊細さ、華麗さ、優美さは恐らく油彩画では表現不可能であろう。リトグラフという手法と、キャンバスにとどまらない宣伝用ポスターやパッケージなどのフォーマットの出現が、彼のセンスに完璧にマッチしていたのは、本人にとっても我々にとっても幸運であった。ポスターの仕事をする者は、現在では画家ではなくデザイナーと呼ばれる。しかしだからといってその価値がいささかでも減じるわけでもない。宣伝用のポスターであっても、それなりのパワーがあれば後世まで残るということか。 販売コーナーももの凄い混雑。「月と星」シリーズのポスターがほしかったのだがなかったので、結局カタログしか買わなかった。しかし甚く後悔している。他の作品を買えばよかった。 やはり絵は目の前で本物を見るのが一番である。といいつつ最近はカタログを眺める日々が続いている。もうすっかり魅了されてしまった。 サロメ ビアズレーの挿画もすべて収録。
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